昭和21年。田舎の山奥の村に暮らす宮崎家の三女・五於(いつを)は国民学校高等科に通う2年生。 ある日、偶然迷い込んだ山の芥子畑で「もののけ」と噂される狐狸の面を付けた不思議な少年と出逢った。 |
東京から来たハンサムで若い英語教師。神戸から転校してきた美少女。卒業後の進路。都会への集団就職。幼馴染みの許婚との結婚話───。真夏の走馬燈のように目まぐるしく過ぎていく五於の日々。 そんな中、戦争孤児で口の利けない宮崎家の末っ子・七郎(しちろう)は、近い姉である五於を一番に慕っていたが、芥子の子が自分に向かって投げかけた意味深な哀れみの言葉により、自分の存在意義について考えるようになっていく・・・・・・。 思春期の自我の目覚めと、人を愛するあまり罪を犯した「物の怪」が償うことの出来ない罪に苦悩する姿を描く、切ない昭和の時代物語。 |